東京高等裁判所 平成7年(ネ)5801号 判決 1996年6月19日
主文
一 本件控訴をいずれも棄却する。
二 控訴費用は、控訴人らの負担とする。
事実及び理由
第一当事者の求めた裁判
控訴人らは、「原判決を取り消す。被控訴人は、控訴人古川富次に対し金九五〇万円、控訴人古川スイに対し金九五〇万円、及びそれぞれに対する平成四年九月二三日から支払済みまで年六分の割合による金員を支払え。訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決並びに仮執行宣言を求め、被控訴人は、主文一項同旨の判決を求めた。
第二事案の概要
本件の事案の概要は、次のとおり付加するほかは、原判決の「第二 事案の概要」(原判決書一枚目裏一一行目から同六枚目裏六行目まで)と同一であるから、これを引用する。
一 原判決書二枚目裏四行目の「本件自家用自動車総合保険契約」から七行目末尾までを「亡隆雄は、本件自家用自動車保険契約に際し、被控訴人に対し、第一回目の保険料一万一九四〇円を支払うとともに、その余の保険料の支払について分割払の特約を結び、平成元年五月以降毎月二六日に口座振替の方法で三九八〇円を支払う旨約した。」と改め、同三枚目表五行目の「六月二七日」を「五月二七日」と、同行の「保険者」を「被保険者」と、同裏二行目の「一四日付で」を「一四日に」と、同四行目から五行目にかけての「本件事故の発生が同月一四日以降であれば」を「したがって、本件事故の発生が右支払の後であれば」とそれぞれ改める。
二 原判決書三枚目裏六行目の次に行を改めて次のとおり加える。
「なお、亡隆雄は、その後平成元年八月分及び九月分までの分割保険料を支払期日である各月二六日に支払わず、各一か月の猶予期間内にもその支払をしなかったため、前記特約第五条の定めにより同年八月二七日以降に被保険者である亡隆雄に発生した保険事故については、再び前記と同様の保険休止状態が発生していた。
訴外黒沢は、平成元年一〇月三一日に、右未納の八月分と九月分に加えて一〇月分までの分割保険料を立て替えて被控訴人に支払った(甲六号証)ことから、同年一〇月三一日以降に亡隆雄に発生する保険事故については、被控訴人において再度保険金支払義務が発生することとなった。
しかしながら、亡隆雄は、その後平成元年一一月分以降の分割保険料の支払につき、その支払期日である各月二六日にも、また一か月の各猶予期間内にもその支払をせず、訴外黒沢も立替払をしなかったため、平成元年一一月二七日以降に発生した亡隆雄の保険事故については被控訴人が保険金支払義務を負わない保険休止状態が再々度発生したまま推移した。」
三 原判決書五枚目表八行目の「特約第五条」を「本件約款中の保険料分割特約第五条」と、同五枚目裏三行目の「保険時期」を「保険事故」と、同五行目及び七行目の各「保険請求者」を「保険金請求者」と、同六枚目裏一行目の「保険料」を「保険料支払」とそれぞれ改める。
第三当裁判所の判断
当裁判所も、控訴人らの本訴請求はいずれも理由がないから棄却すべきであると判断する。その理由は、次のとおり付加するほかは、原判決「第三 争点に対する判断」(原判決書六枚目裏七行目から同九枚目表六行目まで)と同一であるから、これを引用する。
一 原判決書七枚目表九行目の「死亡年月日時分欄」から一〇行目「平成三年の記載は、」までを「死亡年月日時分欄及び傷害発生年月日時分欄にはそれぞれ「平成三年七月一一日頃(推定)」(平成三年の記載は、右死体検案書作成日付及び」と、同裏一行目の「記載さてれいる。」を「記載されている。」とそれぞれ改める。
二 原判決書七枚目裏七行目の「(乙五)」を「(乙四)」と、同一〇行目の「保険者が」から一一行目の「定められている。」までを「保険者は、右払込期日後に生じた保険事故については保険金支払義務を負わない旨定められている。」と、同八枚目表五行目の「右支払後」から七行目末尾までを「保険者は右支払の後に生じた保険事故については保険金支払義務を負うと解するのが相当である。」とそれぞれ改める。
三 原判決書八枚目表八行目から九行目にかけての「七月一四日」の次に「及び同年一〇月三一日」を加え、同一一行目及び同裏二行目の各「同年一四日以降」を「右各支払の後であって保険休止状態でない時期」と、同三行目の「右のように」から九行目末尾までを行を変えて次のとおりそれぞれ改める。
「既に判示のように、一旦保険休止状態になっても、未払保険料及びその遅延損害金全額の支払がなされたときは保険休止状態が解消し、その後に保険事故が発生した場合は、保険者に保険金支払義務が発生すると解すべきであるから、一旦保険休止状態になった後に、保険事故が発生したとして保険金の請求をする者は、保険休止状態の解消とその後の保険事故の発生の各事実の証明責任を負担すると解すべきである(控訴人らは、保険事故発生時期の確定の困難性と公平の観念を根拠として、その立証責任を保険会社に負担させるべきである旨主張するが、右主張は採用できない。)。本件においては、平成元年七月一四日及び同年一〇月三一日に黒沢により未払保険料が支払われたことは右に認定したとおりであるが、本件保険事故が右未払保険料の支払われた後でかつ保険休止状態でない時期に発生したものであることについては、これを認めるべき証拠がないから、本件保険金の支払義務が発生したということはできない(なお、遅延損害金も既に発生していたと思われるが、これが支払われたことについての主張、立証はない。)。」
第四結論
そうすると、他の争点について判断するまでもなく本件控訴はいずれも理由がないので、これらを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法九五条、八九条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 荒井史男 田村洋三 豊田建夫)